がんばる人②
DAY | 2007年10月16日
前回のコラムに引き続き、私が最近の中でもっとも「がんばる人」と思ったある芸人さんのお話。
133kgの体重を、124kgにまで落とした彼は、あと24kgの減量を目標値いや、達成しなければならないことをゴールに掲げた。
「まだ、2ヶ月と1週間ありますから、1週間で約2.7kg減ってればいいんすね」
そんな余裕のある会話で始まった第2クール。通常は1回目のプログラムから若干の休息をとり、十分回復したのち、より強度の強いトレーニングと、もう一度たんぱく質のみの食事制限をする。しかし、今回はそれでは明らかに間に合わないので、例外的にもある程度体重を落とせるところまでは突っ走ることになった。彼は売れっ子で非常に多忙な毎日のため、トレーニングは週に3日、多くて4日、時には2日になることもあった。その上、眠ってしまっている筋肉達は、一向に動きださない。
ある日、ケビンが「筋肉が作動してないから、すぐに頭打ちがくる。これ以上体重を落とすのは無理だよ」と言った。案の定、その時既に118kgになった体重は、1週間以上停滞してしまった。本当にピクリともしなくなった。彼は焦っていた。焦りは彼に物を食べることへの恐怖をもたらし、同時に、何とかしなきゃという気持ちが、できるだけ食事を取らないことで解決しようと追い討ちをかけた。
そんなある日、お水しか飲んでいなかった次の日、彼の体重は増えていた。私もその時はさすがに、久々に感じる不安がよぎった。それでも、ケビンは「あたりまえじゃん」と言っていた。しきりに、「筋肉を使えるようになれ」と。そして、私は彼に思い切って、「明日からバナナを食べましょう」と提案した。ケビンのいう筋肉を使えるようになるために、即効性のあるエネルギーを補充し、効率よく可動できるカラダを目指すためだ。彼は恐る恐るも、出されたバナナを食べた。そして、脚の付け根を使うトレーニングにチャレンジし続けた。あまりうまく行かないのは仕方がない。神経が通る瞬間が来るのを信じて練習し続けるしかないのだ。ケビンは極度の緊張感と、時折大きな励ましを機関銃のようにしゃべりまくり、それを繰り返しながら彼の走る横についていた。
そしてある日、筋肉に神経が通ったのだ。それは明らかに以前とは違う走り方であり、超えることが出来なかったハードルを脚の付け根からまたぎ越していた。ウエイトトレーニングでは、下半身から上半身への力の伝達がうまく進み、以前よりも大きなウエイトを挙げることが出来ている。そうすると、体重は毎日、1kg強落ち始めた。ラストスパートともいえるほど、体重計にのるのが私たちの楽しみになった。
そして、運命の体重測定の日。彼は見事に98.8kgという体重になっていた。通常これだけの体重を一気に落とすと、皮膚がたれ、見るに見かねる状態になっている。しかし彼のカラダは固く引き締まっていた。それがビジュアルとして大きな反響を呼んだ。彼は急速にアスリート化していっているのだ。よく考えてみれば、先日あった世界陸上に集まっていたアスリートたちはこぞって腹筋が割れていた。引き締まっていない人は1人もいない。でも彼らは、ああいったカラダを目指してトレーニングを行ったわけではなく、あくまでスポーツという競技を通じて、その向上を目指している過程で起こった現象があのカラダなわけだ。
要するに、私たち一般人もスポーツが出来るカラダを目指して、トレーニングをする事で、結果好きなカラダを手にする事が出来るのではないだろうか?トータル・ワークアウトは他にない、全ての人が最終的にはスポーツをする事を目的としたトレーニング・ジムで有り続けたい。
そして、今回の3ヶ月を通して、使えるカラダ、つまりスポーツが出来るカラダを手に入れた彼がもう1つ教えてくれたことは、「成功するまでやめないことが成功の秘訣である」というスポーツマンの志。そんな彼だから、きっとプロポーズは大成功だと私は確信している。
トータル・ワークアウト
パーソナル・トレーナー 池澤 智

